トーチのメンテナンスについての一般注意事項

大切なお願い

HF酸 (フッ酸) はガラスもしくは石英製の製品にはご使用にならないでください。どんなに弱いHF酸であっても、製品に損傷を与える結果に繋がります。弊社製トーチは出荷前に十分洗浄が行われておりますので、HF酸による予備洗浄の必要はございません。

お取り扱い、保管や輸送について

弊社製トーチはは全て高品質の石英製もしくはセラミック製となっております。従いまして、そのお取り扱いに際しましては、他のガラスウエアと同様のご注意をお願いいたします。石英製品は壊れやすく、その鋭利な先端でお怪我などなされないように、慎重かつ繊細なハンドリングをお心がけください。

トーチを装置本体に取り付けされる場合や、ガス配管を行う場合にはトーチに無理な力が加わらないように十分お気をつけください。弊社製トーチは全てスポンジフォームで保護された専用箱にて出荷されます。トーチをご使用になられないときには、この専用箱に入れて保管されることをお勧めします。

トーチに素手でお触れになることはお避けください。トーチチューブ表面に油類が付着することで、トーチの寿命に影響を与える場合がございます。

トーチの洗浄に金属ブラシのような硬いものはご使用にならないでください。

トーチの温度

石英トーチの温度が石英材料の軟化点 (1,650°C) を越えるとトーチは軟化します。
このトラブルは多くの場合、アルゴンガス流量の不足によりもたらされます。ガス流量が正しく設定されていない場合やガス配管部分でのリークなどによりガスの流れが阻害された場合、高温のプラズマがトーチに触れることにより、トーチは一瞬にして軟化されてしまいます。
GE 社ではトーチへのガス配管を簡単かつ確実にするためにGazFitコネクターのご使用をお勧めしています。
RFコイルとトーチの位置関係 (同軸度) がもう一つの大切なポイントです。RFコイルを交換される際には、トーチに対しまして適切な位置に設置することが重要です。
GE社ではRFコイルの位置決めツールをご用意しています。
アルゴンガスの流量が正しく設定され、RFコイルとの位置関係が正しく設置されている場合、トーチの軟化は起こりません。
しかしながら、時間の経過と共に石英トーチの失透 (白濁) は進みます。プラズマ温度が上昇するアプリケーションではこの現象は促進されます。

日常のメンテナンスとトラブル時のヒント

装置のご使用前とご使用後に毎回、弱酸性ブランク溶液と脱イオン水による数分間の洗浄を行ってください。このことで、乾燥後トーチのインジェクター内部に結晶等が発生するのを防ぐことが出来ます。

石英トーチのクリーニング

石英トーチ表面に付着した汚れとプラズマによる高温のためトーチの寿命は短くなってしまいます。汚れは主にサンプルからの析出物の蓄積やオイル系サンプルからのもので、アウターチューブ先端付近に多く付着します。トーチ表面に汚れが見受けられる場合には、定期的な洗浄が必要となります。

有機物:有機系溶媒を含んだサンプルによりトーチ管にひび割れが起こる事があります。これはサンプルの導入によりプラズマの温度が急激に変化するためです。問題を確実に解決する方法は温度変化による影響の少ないセラミック製のトーチチューブを使用することです。

写真1 ひび割れし破損した石英トーチアウターチューブ

有機系サンプルからの炭素物の汚れには、500°Cでのベーキングが有効です。しかしながら、これは時間の掛かる方法であり、加熱炉も必要となります。それに変わる簡単な方法として、ガスバーナーを使用する事も可能です。石英一体型トーチやデマウンタブルトーチのアウターチューブとインジェクターおよびD-Torchのアウターチューブに適用いただけます。(D-Torchのアウターチューブには樹脂製のフェルールが取り付けられていますので、加熱炉によるベーキングは出来ません。) D-Torchのアウターチューブ先端をバーナーで過熱する際には樹脂製フェルール側を濡れた布等を用いて保持してください。クリーニング後、温度が十分下がるまでトーチチューブは垂直に保持してください。クリーニング中は常に安全手袋を着用し高温部分に触れないようにご注意ください。

写真2 アウターチューブ上の有機物の除去
写真3 アウターチューブの冷却
写真4 インジェクター上の有機物の除去

析出塩:アウターチューブ上に付着した析出塩と高温により石英チューブの失透が加速されます。

写真5 析出塩による石英チューブの失透

析出塩の除去にはFluka RBS-25 (FLUKA25) の25%溶液による浸け置き洗いが有効です。超音波洗浄器のご使用はトーチの破損に繋がりますので、お避けください。析出塩が恒常的な問題である場合にはアウターチューブの短いショートトーチのご使用をお勧めします。ショートトーチでは若干の感度の低下は起こりますが、トーチ寿命は飛躍的に延びます。 Glass Expansion社では様々な種類のショートトーチをご用意しています。

金属:高濃度の金属を含んだサンプルによりアウターチューブ表面に金属薄膜が形成されます。金属薄膜は電磁場に影響を与え、電磁場を発生させられない場合も起こります。薄膜は酸溶液への浸け置き洗浄で取り除く事が出来ます。洗浄に最も効果的なのはサンプルに含まれるものと同じ酸溶液です。(フッ酸は石英チューブの洗浄にはご使用いただけません。) トーチチューブ周りの樹脂製部品への影響を避けるため金属薄膜が存在する部分のみ酸溶液に浸けるようにしてください。トーチチューブを垂直に固定し浸け置きすることで樹脂製部品への影響を最低限に抑えることが可能です。

写真6 アウターチューブの浸け置き洗浄

素手でのお取り扱いは避けてください。素手で石英部品に触れることでも汚れが付着します。トーチ部品のお取り扱い時には常に安全手袋をご着用ください。トーチ表面に付着した油分はトーチの失透に繋がり、トーチ寿命を短くします。

D-Torchの利点:D-Torchでは寿命の短いアウターチューブのみ交換する事が可能で、一体型トーチ自体を交換することに比べて経済的です。また、セラミック製のアウターチューブは析出塩や有機物の影響を受けない長寿命パーツです。

写真7 セラミック製アウターチューブを搭載したD-Torch

セラミックD-Torchのクリーニング

D-Torchに搭載されているセラミックチューブは通常石英チューブに比べて頻繁な洗浄は不要です。殆どの場合、アウターチューブとミドルチューブに付着した汚れは湿らせた布や固い目のスポンジなどで取り除く事が可能です。簡単には除去出来ない汚れに付きましては以下の方法で洗浄ください。

有機物:有機系サンプルからの付着物はガスバーナーで焼去する事が出来ます。加熱時に反対側の樹脂製部品の破損を防ぐため、樹脂製部品周辺を湿らせた布等で包み込むようにしてください。クリーニング後、温度が十分下がるまでトーチチューブは垂直に保持してください。クリーニング中は常に安全手袋を着用し高温部分に触れないようにご注意ください。D-Torchのアウターチューブには樹脂製のフェルールが取り付けられていますので、加熱炉によるベーキングは出来ません。

析出塩:析出塩の除去にはFluka RBS-25 (FLUKA25) の25%溶液もしくは酸溶液による浸け置き洗いが有効です。トーチチューブをビーカーに垂直に立て、析出物が付着している部分のみが浸かるように洗浄液を注いでください。樹脂製部品は酸溶液に触れないようにご注意ください。

金属薄膜:薄膜は酸溶液への浸け置き洗浄で取り除く事が出来ます。洗浄に最も効果的なのはサンプルに含まれるものと同じ酸溶液です。トーチチューブをビーカーに垂直に立て、薄膜が形成されている部分のみが浸かるように洗浄液を注いでください。トーチの樹脂製部品は酸溶液に触れないようにご注意ください。